マンションの総会で一般的に議決権行使書を付けるようになったのは、2007年(平成19年)頃からと記憶しています。それまでは、出席か委任の二通りで、同じような考えの人が見つからない場合は、実際に出席しないと意思表示ができない状態でした。ある議案に反対の場合は、出席して反対してくれる人が分からないと、その人の氏名を記入することができず、氏名を記入していないと議長委任となり、賛成票となるため、提出しないという選択肢になっていました。
2002年(平成14年)の区分所有法の改正で第39条(議事)に第3項が追加され、議決権行使が可能になっていましたが、実際に普及するのに5年ほどかかったようです。議決権行使があることで、実際に出席できない人の意思表示が明確になり、出席率も上がる良い方法だと思います。
しかし、議案書は、議決権行使に対応しているものになっているでしょうか。実際に上程された管理会社変更に関する議案書例を紹介します。
第〇号議案【B社との管理契約締結の件】
先般より、現行管理会A社の後任会社として、一部の組合員よりB社の紹介があり、折衝した結果、以下の条件で管理を委託することを理事会でまとめました。
【管理仕様】B社契約書案、重要事項説明書通り
【管理委託費用】〇,〇,〇円(税込・年額)現行の実施業務と同等仕様にて作成した金額です。設備不良により発生する改修を要する費用は別途となります。
<参考/A社委託金額との比較>現行〇,〇,〇円(年間差額は+1,386,000円)。
【管理開始日】2023年6月1日~
※日程調整で若干変動する場合があります。理事会で調整します。
【業務関連で管理組合負担となるもの】
①総会議案書・議事録等の印刷代(1ページ10円)、外部オーナー郵送代
②管理費等口座振替手数料
(1戸88円×戸数+収納口座・保管口座に移動する手数料528円×月2回)
③管理人室の緊急対応用の電話回線費用、電話による出動対応費
④共用部電球代、ゴミ袋代、清掃用具、文具用品、その他消耗品等は
管理組合の負担
なお、総会中、本議案の審議前にB社から本契約締結前の重要事項の説明があります。その後、各組合員の質疑応答を踏まえてから承認か非承認かを議決したいと思います。
という内容でしたが、この議案を読んで知りたいと思ったことは、
①どうして変更するのか
②他社に相見積もりを依頼したのか、どのような交渉をしたのか決定の経緯が
分からない
③将来、徴収している管理費が上がるのではないか(現在270円/㎡・月)
という心配が出て来ました
議案について変更になるA社が投げやりで、アドバイスしなかったのか、B社も遠慮して議案について助言しなかったのかは不明ですが、気になる部分が多い例です。
確かに標準管理規約では、普通決議の総会招集は2週間前に会議の日時、場所及び目的を示せばよいことになっています。このように丁寧な説明や経緯が記載されていない議案だと議決権行使書があっても判断がしにくいと言わざるを得ません。
大切なことは、関わっている人なら理解できても初めて読んだ人が内容を理解できて、判断ができるように記載されているか各戸に配付する前に確認して進めることだと思います。