平成30年(2018年)のマンション総合調査で、管理費等の滞納が3カ月以上あるマンションは24.8%で、築年数の古いところの割合が高くなっている傾向があります。
平成9年(1997年)の中高層共同住宅標準管理規約では、義務違反者への措置は区分所有法の第57条に従って、管理組合を代表して訴訟する場合には、集会の決議が必要でした。
平成16年(2004年)のマンション標準管理規約の改正で、第60条第4項「理事長は未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により管理組合を代表して訴訟その他法的措置を追行できる」とされました。
これは、最高裁でマンションの管理費等は5年間で請求権が消滅する「定期給付債権」(民法169条)にあたるとの判断が示されたことが影響しています。
管理費等は、マンションの維持管理の財源であり、その滞納は適正管理を脅かす問題なので、未納管理費等の請求を速やか適切に行う必要があり、共用部の管理に関する事項は、原則総会決議で決するところ、未納の管理費等の請求に関しては、理事会決議により理事長が管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することを可能にする規定となりました。
最終手段として滞納管理費等の回収のために訴訟した場合、区分所有法第26条第5項(マンション標準管理規約第67条第6項)では、管理者(理事長)は、「原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない」と規定されています。
それでは、「通知」とは、何をすればいいのでしょうか。「いつ」「どこの裁判所に」「どんな内容で訴訟したか」は、区分所有者に伝える必要があると思われます。これは、マンションの共用部分等は組合員である区分所有者の共有財産であり、その費用は最終的に持分に応じて負担することになって、各自に跳ね返って来るからです。
事業報告書に未収金が計上されている場合の総会では、管理費等は管理組合の適正な維持・管理に必要な収入源で、間違いなく確保されているという説明と滞納者数、滞納期間、滞納額(前年との比較)とその回収見通しの説明は必要です。
一般的に未納の管理費等の督促は、管理委託契約により管理業者が6~12カ月間担当しますが、理事会の未収金を削減しようという強い意識によって回収率が異なります。
管理業者の担当者に「いつ」「どの様に」「何回」回収行動をしたか、毎月の理事会で報告させることで、担当者の意識も変わり、回収額も増えます。
未収金について、理事会は組合員に説明する責任がありますので、理事長等も滞納期間が4~6カ月と経過した時には、複数の理事で滞納者と面談して、相手の状況をよく聞くと共に自らの立場の説明、遅延損害金が発生することや誓約事項が守れてない場合は訴訟になること等を説明しておきましょう。
この様な行動や組合員への丁寧な説明が、次の未納者を出さない最大の防御策になります。