長期修繕計画は、およそ5年ごとに見直しを行い、収支バランスが取れるように修繕積立金額も変更することが推奨され、実施しているところが多くあります。
それに対して、管理費の徴収額の見直しを定期的に実施しているところは少なく、年々支出が多くなり管理費会計のバランスが崩れているところが多くみられます。
原因の一つが消費税増税です。1989年4月に初めて導入されて3%、その後1997年4月に5%、2012年6月に8%、2019年10月に10%に値上げされ、確実に費用に転嫁されるので、そのたびに値上がった割合で管理費m2(平方メートル)単価の徴収額を値上げをしていないと徐々に支出が多くなり、バランスが取れなくなります。
特に築年数が経過したところでは、修理箇所が年々多くなるため、影響も大きく表れます。
次に、損害保険料の値上げです。マンションは、多くのところで損害保険会社と「マンション総合保険」を契約期間5年、一括払いで契約しています。
ところが最近では、築年数の経過したところの事故が多いこともあって、料率を高く設定された上に平均で2019年10月に120%、2021年1月に115%と値上げが行われ、前回の契約時より確実に138%も支払い額が多くなってきています。
さらに、5年の契約期間の後半(満期1年6カ月のところもあります)の請求実績により50%~130%程度(築年数により100%~130%程度)の料率が適用されることになったので、今まで通り何でも保険請求した管理組合は130%程度となり、単純計算で平均値上げと合わせると前回より179%支払い額が増える計算になります。
例えば、100万円/年の保険金額の支払いだったところは、5年一括支払いで500万円の支払いでしたが、次回は同一条件で895万円の支払いとなり395万円の増額になってしまいます。
三つ目に車の所有意識の変化による駐車場収入の減少があげられます。特に機械式駐車場の場合は、空きスペースが増えることで収入の減少だけでなく、出費であるメンテナンス費用がかかるため、ダブルパンチの状況になります。機械式駐車場は、一般的に25~30年で入替が計画されていますが、空き状況をみて組合員へのアンケート等により所有意識を確認するとよいでしょう。
20年程度であっても最近の自動車は大型化していますので、収容可能最大寸法の改善を含めて台数減を行うことも選択肢として、検討することをお勧めします。
マンション標準管理規約(単棟型)第29条(使用料)では、「駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる」と規定しています。
しかし、管理費の徴収額だけで管理費用を賄えていないところは、駐車場料金等の収入をプラスすることで、単年度の赤字を免れているのが現状です。このようなところでは、定期的に駐車場収入を修繕積立金会計に移行することができず、結果的に適正な修繕や改修計画に影響がでることになります。
このような状況を踏まえて、「どのような管理をすれば、安全・安心な住環境が維持できるか」を話し合い、管理委託契約に反映させる管理のレベルを確定させるために自分のマンションに合った色々なパターンの仕様を試みて、仕様書の見直しを行いましょう。
その後、組合員に説明を行って、管理費会計の単年度で不足する額が充当できる管理費m2(平方メートル)単価に徴収額を変更できるように総会に上程して、バランスのとれた管理費会計にする必要があると思います。