管理組合の顧問から第三者管理を引き受けて、2度目の定期総会を迎えようとしています。
このマンション(昭和41年築、RC造5階建、住居40戸)と出会ったのは、不動産会社に籍を置いていた平成20年当該マンションの一室を売買するにあたり、重要事項説明のため現地確認に訪れた時からです。外見からは「しっかり管理されているマンション」という印象を受けました。管理規約、滞納状況等の調査のため面談したところ「管理規約がないため制定して管理組合も作り、管理を管理会社に頼みたい」との希望を持っておられました。
2~3日後、管理グループの代表3名が来られ、「管理規約の制定と管理組合の役員の選出を手伝ってほしい」と依頼され、正式に契約を結びました。
詳しく現状を尋ねてみて分かったことは次の4つでした。
① 30年前管理していた会社が倒産したため、6名の有志がボランティアで24年間管理を実施していたが、6年前から若干の手当てをもらうようにした
② 管理費・修繕積立金の集金と清掃は自分たちで行い、業者を頼んで点検、外壁等の修繕を行っていた
③ 高額の滞納者が3名おり、対応に苦慮している
④ 管理グループは管理から手を引いて他の方に役員を任せたい
管理規約のたたき台を作り、管理グループの方々と何度か打合せ、案がまとまりましたので、説明会の開催を進めました。「何度も集まれない」との意向でぶっつけ本番になりましたが、全区分所有者に臨時総会の案内を出しました。
当日は外部オーナーも含め38名の出席があり、それぞれの立場の人が「長年管理を引き受けてくれて感謝しています」「強行採決なら法的手段を取る」「自主管理で報告がない団体に管理費等は支払えない」と長年の思いを述べ、議案とは程遠い会話がしばらく続きました。
しかし、今迄外部オーナーに報告を怠ったことを管理グループの方が陳謝したことや「皆さんはこのマンションを良くしょうと思い、本日集まったのではないでしょうか」という私の問いかけから雰囲気が変わり、議論が進むようになりました。管理規約の承認と役員の選出もでき、管理会社の選定も理事会に一任となりました。
理事会で数社の管理会社から見積りを取り、ヒアリングの結果一社を選定、次年度以降の輪番役員表と共に臨時総会で承認され、新しいスタートを切ることが出来ました。
司法の力を借りて滞納問題を解決し、輪番制役員が一巡した5年目になると家族・本人の病気や高齢を理由に役員の辞退者が目立つようになりました。そこで国土交通省が出した「考えられるマンションの管理方式」の検討と同時に毎年役員に就任できるかどうかアンケートをすることとしました。その後、マンション管理士が顧問でいることも踏まえて、役員定数を4名に削減する規約改正を実施し、管理費を 600円/月 値上げして、役員報酬にあてることにしました。手当ては 36,000円/年 とし、5年に一度役員に就任すれば値上げ分が相殺できるようにし、事情で就任できない方の気持ちの負担も解消できると考えた案でした。「みんなで協力して管理して行こう」というアピールによって就任してもよいという方が増え、役員のなり手不足は一時解消しました。
しかし、大規模修繕工事も無事に終了した9年目になると「もうひと頑張り」という気持ちで今まで頑張って来た方々も80歳代になり「自分のことでいっぱい」という意見が出てきて、4名の役員選出が出来ない状態になってしまいました。
定期総会で理事会を廃止して第三者を管理者とする方式を検討することが承認され、管理規約改正も含めて議論することになりました。
金銭事故の防止策として、報酬ありの理事を1名区分所有者から選任し、銀行印の保管・押印の業務を行ってもらい、銀行の通帳名もその理事とすることとしました。管理会社が通帳を保管し、管理者が管理費から出金が必要な場合は、銀行の出金伝票に金額を記入して、理事に説明の上押印してもらい、その伝票を管理会社の会計に出金処理してもらうこととし、第三者の管理者が単独で出金出来ない方式にしました。そして管理会社が作成する月次報告と管理者が作成する業務報告を翌月に理事に報告することとしました。
一年間議論を重ねた最後に管理者の選出は公募するように進言しましたが、管理組合立ち上げから9年間顧問として携わっている私が適任と全役員と役員経験者から推薦を受け、管理規約の改正、理事の選任と外部の管理者との契約の議案が臨時総会に上程され、承認されました。
外部の第三者が管理者となり、一年八カ月以上が経過しています。漏水事故・放置自転車の対応、修繕工事・点検の立会い等、毎月異なる案件がありますが、区分所有者の負担は大幅に減りました。
第三者管理の管理者を実際に経験してみて、第三者として助言する管理組合の顧問との違いを実感しています。