マンションの管理の適正化の推進に関する法律で、管理の主体は管理組合であり、その運営は区分所有者等の全員が関心を持って参加し、意見が反映できるように情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要があると規定されています。
たまたま輪番制で理事に選出されてしまい、今までも管理に関心がなく、総会の委任状は提出しても実際に出席したこともなく、議事録もしっかり読んだことのない状態での就任のため、予備知識もなく、席について管理会社のフロントマンの報告を聞いて、解決策に同意しておけば一年間はあっという間と思い、輪番理事を承諾した方ばかりが集まった場合は、理事としての自覚もなくお客さん理事会になってしまうことは否めません。
そのような理事会では、理事会の日程を決める時にフロントマンの都合が優先されてしまう、点検指摘に対する改善案が複数ある場合でも一案だけの提案で、選択肢はやるか否かになってしまい、解決策を比べることもできません。そもそも知識がないため議論することもできないので、何か引っ掛かる思いがあっても管理会社の提案通りに進めているという状態になります。
特に水の設備だと「いつ断水するか分からない状態です」「事故が発生した場合、責任問題になりますよ」というセリフを聞くと、結論は一つ「お願いします」となります。
管理会社が点検作業を実施し、その結果指摘事項があった場合、理事会で現場写真と見積もりを提示して、フロントマンが説明する風景はどこでも見かけることです。
これは、マンション標準管理委託契約書の別表1事務管理業務の2基幹事務以外の事務管理業務(3)その他①各種点検、検査等に基づく助言等による『管理対象部分に係る各種の点検、検査等の結果を甲(管理組合)に報告するとともに、改善等の必要のある事項については、具体的な方策を甲に助言する。この報告及び助言は、書面をもって行う』という規定に基づき行っているのです。
しかし、管理は頼んでいますが、工事については契約に入っていませんので理事会で提案を受けても緊急を要しない工事の場合は、すべてその場で即決する必要はありません。
「工事に関しては管理会社も業者の一つ」と考えて、自分たちでも見積もりを取って比べてみましょう。
管理会社から二社の見積もりが提出され、それを比べても提出前に調整されていることも考えられますので、競争という観点からみると意味のないことだと考えてください。
次に、管理会社とうまく距離を取り、ほど良い緊張感を維持している管理組合を紹介しましょう。
その管理組合は管理会社と全部委託の契約をしていますが、毎月の理事会の冒頭に「管理会社の評価」を実施しています。フロントマンには一時離席してもらい、理事会役員と管理士の私で前回の理事会から本日まで、問題はなかったか、考えられる問題の解決方法は、点検や清掃の実施があった場合の対応は、居住者の要望やクレームは無かったかを話し合い、改善する必要があった場合は、理事長が意見をまとめてフロントマンに申し入れ、社内調整が必要な事項は持ち帰ってもらい、回答をもらうこととしています。
工事に関しても大きなものは、複数の業者から相見積もりを取り、比較検討をして決定しています。もちろん、決定するまではその議案の会議にフロントマンは参加できません。
見積もりにより管理会社以外のところに発注した場合でも、専有部に入る工事でその業者と区分所有者の間でトラブルが発生しても管理会社が責任を持って調整するように管理委託契約書に規定を追加してあります。
管理会社のフロントマンは自社が推奨する工事を多くのマンションで説明して、実施した実績を持っていますので、自信たっぷりにこの方法、この位の価格は当然と説明します。しかし、協力会社等が違う別の管理会社では、同じような工事でも方法・価格が異なる場合かあるのです。
理事は、自分たちで決定・実施したことについて、組合員に説明して承認を得ることが必須であるという自覚を持って、自分たちで情報収集する努力をすることで、適正価格での施工につなげることが出来ます。
「マンションの管理は頼んでいるが工事までは契約していない」という考え方で、理事の一人ひとりが情報を持ち寄って、自分たちのマンションに一番合う方法を見つけて、管理会社とも緊張感の保てる距離でつき合うのがベストです。