平成12年のマンションの管理の適正化に関する法律(適正化法)で、管理組合は適正に管理すること、区分所有者はその一員として役割を適正に果たすように求められました。
また、標準管理規約で役員は組合員のために誠実に職務を遂行することも求められています。
しかし、役員に選出されても理事会に出席して来ない人や理事会が開催されても議論があまり行われないで、管理会社の情報だけで進んで行くケースもみられます。見積り金額や進め方等に不満があるものの、どのように対応すればよいか分からず、不満を解決できずに月日が経過し、次の人に交代する時期になってしまうところが多くあります。
活発な議論が行われないところでは、「反対すると角が立つから……」、良い考えはあるが「それならあなたやりなさい」と言われても困る、「自分の考えとは違うけれど大したことじゃないから……」、「何でもいいから早く決めてよ」という思いから発言が少なくなる傾向があります。
情報が少ない、状況や内容が分からないので判断できない中で、自分で調べようとしない「お客さん理事会」が長く続くと「決めない」「決められない」状態になり、問題が先送りされるか管理会社の提案をそのまま受け入れる状態の理事会になってしまいます。
そのような状態を変える一つの選択肢として専門家の活用があります。マンション標準管理規約第34条では、マンション管理士等の管理に関する専門知識を有する者から運営や管理に関する相談・助言・指導・その他の援助を求めることができると記載され、第27条9項で費用の支出も総会で承認されれば、できるようになっています。
現在、多くの管理組合で輪番制役員による理事会運営を選択していますが、その現状は、①個人の資質ややる気により理事会のレベルが左右される、②任期終了後も同じ建物に住み続けるため、在任中他の区分所有者が不適切な行動をしていても指摘することを躊躇してしまう、③組合員の高齢化や賃貸化の増加による役員のなり手不足が挙げられます。
マンション管理士等の専門家の活用メリットは次の5つです。
① 役員の負担が軽減され、役員人数も削減することが出来ます
② 管理組合の主体性と継続性が確保できます
③ 誰が役員になっても運営が安定します
④ 専門家からアドバイスが得られるため、自らの意思で適切な管理を行うことが容易になります
⑤ 役員就任への不安が取り除かれ、安心が生まれます
役員の精神的な負担も軽減しながら、管理組合のレベルを維持でき、経験や情報量から長期的な視野にもたてるマンション管理士等を管理組合の運営に組み込むことは、管理組合にとって高齢化対策や役員のなり手不足の問題解決に有効で現実的な一つの方法だと思います。