標準管理規約の理事長(第38条)で、管理組合を代表し、業務を統括することが定められ、第2項では、区分所有法に定める管理者とするとなっています。
区分所有法の管理者の権限(第26条)に「共用部分並びに建物の敷地及び付属施設の保存と総会の決議の実行」と「規約で定められた行為(標準管理規約第38条1項)をする権利と義務も負う」と記載されています。
また、保険金額の請求・受領(標準管理規約では第24条2項)をはじめ、共用部分で生じた損害賠償金や不当利得による返還金の請求・受領(標準管理規約では第67条3項)に関して区分所有者を代理するとも記載されています。
標準管理規約の専有部分の修繕について申請先は理事長名になっていますが承認又は不承認(第17条)をはじめ、他の理事に職務の一部を委任すること(第38条5項)、臨時総会の招集(第42条4項)、経費の支出(第58条3項)、訴訟その他法的措置を追行すること(第60条4項)、区分所有者への行為の差止め等や訴訟において原告又は被告となること(第67条3項)について単独で判断すること(第21条6項を除く)が出来ず、災害等の緊急時以外すべて理事会での決議が必要とされています。
しかし、出金が可能な理事長印を持っていることで、毎月管理会社のフロントマンが、手続き上押印を願い出ることが多くなると、あたかも権限があるように錯覚してしまう人がいます。総会で決議されたこと、理事会で管理上必要なこととして決まったことを確認して権限の枠を超えない範囲で、押印することが大切です。出来れば、理事会の時間内で説明を聞いて役員の皆さまの前で押印することがベストですが、理事会前後に押印する場合は、三役が立ち会うことや内容・金額が分かる押印リストを作成しておいた方がいいでしょう。
一方、仕事の規定は、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告(標準管理規約の第38条3項)、通常総会の招集(第42条3項)、総会の議長(第42条5項)、議事録の保管・組合員又は利害関係人への閲覧(第49条5項)、議事録の保管場所の掲示(第49条6項)、理事会での議長(第51条3項)、予算案の上程・承認(第58条1項)、会計報告(第59条)、区分所有者への通知(第67条6項)と多くの規定があります。
活発な意見の出る期の理事会では、調整を行いながら作業を進めて行く必要がありますが、積極的な意見の出ない期では、自ら方向性を示し総会決議事項を実施して行く能力が求められます。
災害等の緊急時以外権限がないのに結果報告等や保管・閲覧への対応が義務付けられている点を考えると「理事には就任しますが、理事長だけはいやだ」という声が出ることに納得してしまいます。