マンションの管理は、理事長が管理会社と委託契約を結び、全面委託で管理している方法が大半を占めています。管理会社も現在のように管理のすべてに対応できるように社内体制を管理組合の要望に合わせて拡大して参りました。ただその歴史は39年と浅く、これからも変化して行くものと思います。
バブル崩壊後、管理の見直しに焦点が当てられ、管理組合から管理会社への要求が増大して、以前のような利益を計上できない管理会社が増えてきました。管理組合でもリプレイスする目的で他社から管理委託費の見積もりを取ることも気軽に提案できる雰囲気があります。
管理会社各社は管理物件獲得のため、自ら動いて価格競争にその身を投じています。価格で取れた組合は、さらなる価格の提示で取られてしまうケースもあり、質の低下が懸念され、結局管理組合にツケが回る構図になっています。
少ない利益から会社を守るためには、管理組合から見えにくいところの経費を削るしか方法がありません。それは、社員の教育です。
また、フロントマンは理事会での説明や質問に対応するために、多岐に渡り高い専門性を要求され、トラブルの現場対応ではバランス感覚も必要です。仕事内容や量と待遇を比較すると、見合っていないことが多く、離職者も多い職種で、レベルの維持や人を確保することが大変な会社もあります。
一方、管理組合は、築年数を重ねた建物の管理を適切に行うために専門的な知識と経験が必要なのに、「順番だから何となく引き受けた」「それぞれ事情やスキルが分からないので、決められない理事長は抽選で決定しましょう」というような理事候補が集まる理事会で、担当させられる輪番制理事に正しい判断を要求することは、荷の重いのが現実です。
さらに住みやすさから、入れ替わりが少なく揃って高齢化が進んだことや、賃貸化により外部オーナーの増加のため、年々理事に就任する人が限られて、役員のなり手不足は深刻な状態です。
このような状況下で将来のマンション管理を考えてみました。管理会社が今までのように総合管理を続ける場合は、フロントマンのスキル(経験年数と保有資格に合わせてマンション管理業協会がランクを決める)に合わせて費用の異なる管理委託契約を締結する。そのようにすると担当物件を減らすことでき密度の高いサービスになるうえに、フロントマンの待遇改善にも寄与することになります。
次に、管理会社が総合管理の看板を下ろし、得意分野に特化した場合、
(a)基幹事務の会計のみを専門に行い規模を拡大させる会社
(B)基幹事務に設計会社や建築会社と提携して大規模修繕工事を請け負う会社
(c)基幹事務に設備点検会社と提携して点検業務を行う会社
という3つのパターンが考えられます。
しかし、この(a)のパターンだと今までのフロントマンの仕事をする人がいません。そこで登場するのが、専門知識を有する第三者の専門家で、イメージは建築のコンストラクション・マネージャー(CMr)です。管理組合は理事の負担を減らすこともでき、理事の人数も削減できます。運営の継続性が担保でき、専門家からアドバイスも受けられるので、手順を踏んだ運営ができるため理事就任の不安も解消します。第三者の専門家を管理者に選任すれば、役員のなり手不足の解消にもなります。
このような第三者の専門家には、マンション管理士やスキルのあるフロントマン経験者が考えられます。マンション管理の将来を見据えて、色々な方法が考えられますが、それぞれの立場の方がレベルをあげるように今から準備する必要があると思います。
特に管理組合は、区分所有者の年齢層、建物の状態、長期修繕計画の実行進捗、防災計画等現在の状況から「将来どのような管理・運営が有効か」専門家に診断・アドバイスを受けて、話し合うことが必要な時期になっていると思います。