SDGsの目標12(つくる責任・つかう責任=3Rにもっと取り組みましょう)と直結しているのが、管理組合の水害対策です。
マンションでは、上階(縦)に対する対応が可能なので、その利点を生かして大きな費用をかけずに一時的なルールを定めておくことで、対策になります。
江東5区では、河川の水位が高くなり、氾濫のおそれが出てきた場合、共同検討を始めるようになっています。その結果、48時間前に「自主的広域避難情報」が呼びかけられ、24時間前に「広域避難勧告」、9時間前に「域内垂直避難指示(緊急)」の情報が発表されます。
江戸川区のハザードマップによると、最大で10m以上の深い浸水が1~2週間以上続くとされています。少しでも安心して広域避難をしてもらうために、1階~4階に居住している人の荷物について、5階以上の廊下にあらかじめ移動できるように場所を決めておくことがポイントです。
多くのマンションで1階にある看板や自転車等は5階に移動させ、居住者の荷物について、例えば101号室は601号室前、102号室は602号室前と具体的に場所を決めておくことにします。
昨今の共用廊下は、1.2mはありますので、建物側から半分の60㎝の奥行と幅、高さを合意しておき、コンパネ等の板に移動する住居の部屋番号を書き、ブルーシートと共に管理組合で予算化して、購入・保管しておくことをお勧めします。
共用廊下を一時的でも個人が使用することは、一般的に管理規約や細則で禁止されていますので、管理組合が主導して期限付きで使用できるように準備しておきましょう。
水害対策について、マンションが一丸となって対応している協力体制は、「安心して住めるマンション」ということが伝わり、資産価値の向上にも繋がります。
マンション内で荷物を移動させる時期は、遅くても48時間前の「自主的広域避難情報」が発表されたと同時に行い、完了した住戸から避難する人は順次避難を開始します。
5階以上に居住している組合員は、集会室等にある書類(事前に透明の衣装ケースを準備しておく)や備品、看板、自転車等の移動に協力することも決めておきましょう。
電気室が1階に設置されているマンションが多いので、対応する水深を予め決め、それに応じた止水板が設置できるように改修することも検討しましょう。
震災と異なり、水害は水没までに時間がある程度あるので、事前準備がしっかりできていれば、混乱を回避できます。各戸がどの位の時間で荷物を移動できるか、実際に移動させる訓練を繰り返し経験することで、風水害の対策に備えたマンションという価値が髙まるのではないでしょうか。
また、目標11(住み続けられるまちづくり)から耐震問題を見た場合、旧耐震マンションで、大規模修繕工事は定期的に実施しているのに耐震診断等の議論をしようとすると「自分が死んだあとに実施してほしい」という声で話が終わってしまうところがあります。
今後、旧耐震マンションを一律に助成する考え方を改め、50年以上の築年数に特化して、防災・安全対策の観点から地域住宅計画に組み入れた拡充した助成金制度にすることで、次の世代に引き継げる建物、使い続ける建物という考え方が区分所有者に浸透して、個人所有でも一時代の所有者という意識が強くなれば、耐震診断・改修が進む可能性があります。
次の世代により良い状態で引き継ぐ継続性が重視され、耐震に関する議論が進むことで、区分所有者の入れ替わりも今より進みますが、建物所有意識の改革が可能か検証する必要があるので、時間がかかることだと思います。